昔々の冷戦時代、ロシア近辺のあるところにおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさ「セロテープの内側があんなに空間を無駄にしている。許せない!」
ナレーションが語り終えるまで待ってくれないくらいせっかちでした。
ともあれ、おじいさんは激怒した。必ず、かの邪知暴虐のセロテープを除かねばならぬと決意した。
おじいさんには政治がわからぬ。おじいさんは、村の「私の出番はまだですかいのぉ」
すみません、もうしばらく待ってください。
そういった紆余曲折を経て、おじいさんプレゼンツ『マトリョーシカセロテープ』なるものが売り出されたのでした。
『セロテープ。使い切っても、中にまた』のキャッチコピーで全世界三千万本……本? 包? セロテープの単位ってなんだ? えーと……はい、わかりました。巻、というのだそうです。
そんなある日、おばあさんが川でウォッシュしていると、上流からどんぶらこっこ、どんぶらこっこと巨大なセロテープが流れてきたのです。
「これは使える!」
おばあさんは、この流れるセロテープに着想を得て、『トイレで流せるセロテープ』なるものを売り出したのでした。
これが、後の世を大混乱に陥れた『セロテープリーマンショック』につながるとはこのとき誰も想像していなかったので「わしの出番はまだかのぉ!」
すみません、もう終わりです。
おととい、「我々は宇宙人だ」をやるためだけに、先輩がエアコンを売り払って扇風機を購入したそうで。
そして、今、『暑いよ暑いよ。助けてへるぷ』と電話口で野良犬がエサをおねだりするような声をあげているのはどういうことでしょうか。
「先輩。阿呆ですか、あなたは?」
『そのさげすむような声がたまりません』とかほざき始めました。どうやら手遅れだったようです。
「はあ……ちょうど私もアイスを食べたかったところなので、買って行きます」
『俺、あずきバー』ともほざいていますが、無視です。一番安いものに決定しているのですから。
「まったく、これっきりにしてくださいよ?」
私も暇ではないです。
夏は短い。受験生の夏はもっと短い。
先輩に構うのも、その……嫌いではない。嫌いではないのです、が! そうのんびりもしていられません。
『いやあ、それはちょっと……君に来てもらうためだけにエアコン売ったんだし――って、あああ! せっかく隠してたのにぃ!』ほざいてます。
この阿呆な先輩に構っていると夏なんてすぐに終わってしまいそうです。
いいえ、夏どころか一年も十年も。一生だって、楽しすぎてあっという間になってしまうでしょう。
でも、受験生には邪魔者です。
なので、この邪魔者さんがおなかを壊して静かに寝込んでくれるよう、おなかを冷やしてやろうと思います。
たくさんの、あずきバーで。
海亀の涙のようなものだ、と友人に言った。
「なんだそりゃ?」
君がデートに行った。うん、いいさ。
食事の払いをワリカンにしようと彼女に持ちかけた。まあ、これもいい。
でも――ワリカンで1円が割り切れなかったせいでケンカになるというのがどうしようもない。
「だってなぁ、結婚したら俺の稼ぎで食うんだぞ、アイツ。なら、今くらい払えって話だろ」
……。
君さ、誕生日にプレゼント贈り合ってるよね?
「ん? ああ、同じ値段のものをな。ちゃんと端数は食い物にしておごって清算してるぞ」
君がもらったその腕時計……いくらだって?
「9万8000円。2000円は食った」
発売当初の定価じゃなくて、現在の価値、知ってる?
「……おい、俺が贈ったのは現金だったんだぞ?」
だから言ってるのさ、海亀の涙みたいなもんだって。
「産卵のときに流すっていう、アレか?」
そう、それ。
実は涙じゃなくて、体内の塩分濃度を調整しているだけのものなんだよ。
別に、産みの苦しみがどうという話ではないのさ。
「なんか……俺、ニセモノの涙に大分だまされてる気がする……」
まったく、しょっぱい話だ。
