商「あああ、姫様が姫様が」
商「……あれ? 意外とケンカが収まっていくような」 姫「ただいまー」 商「見事に口論を収めちゃいましたね、姫様」 姫「姫様いわない。まあ、このくらいなら普通でしょ」 商「ですか」 姫「あっはっは、商人の娘をなめてもらっては困るよー」 商「おみそれいたしました」
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商「安いよ安いよー!」 姫「粗悪品だけど安いよー!」 商「姫様だよー! 本物だよー!」 姫「中身や育ちはともかくモノホンだよー!」 商「というわけで、いかがでしょう?」 姫「まいどありー!」
商「……商売に向かないのかなぁ」 姫「うーん、根本的だなぁ」
商「さあごらんあれ、ここにおわすは恐れ多きことに本物のお姫様でございます」 姫「血統書付きー!」 商「このつややかな髪、整った顔立ち、すらりとした体、どれをとっても王家の風格がにじみ出ておりましょうぞ」 姫「じわじわー!」 商「今であればこの王女様をこのお値段で!」 姫「お買い得ー!」
商「……売れない」 姫「いじけなーい、いじけなーい」
商「安くしておきますよ……本物の王女様です」 姫「モノホンだぞー!」 商「これこのとおり、奴隷契約書もきちんと」 姫「なんと全千五百八十ページ。一日一回おやつを出すとかえっちぃことはしちゃダメとかも書いてあるぞー!」 商「市井で育ったものですので何かと気遣いが要らないかと」 姫「気品とか礼儀作法もないけどねー!」
商「なぜ売れないんだぁあああああ」 姫「あっはっは」
姫を買った。 貯金どころか退職金まで充てることになったが、それでも本物の王女様だ。 よもや――
姫「はー、せんべいがうまい」 商「あぐらかいてバリバリ音を立てながら食うなぁあああ」 姫「や、ご主人。元気ぃ?」 商「あーあー、かけらがポロポロ落ちてる落ちてる」 姫「怒ったりなげいたり相変わらず忙しいねぇ」 商「誰のせいだ、誰の」 姫「あっはっは、生きてればそのうちいいことあるよー」 商「ううぅ、不良在庫だ……」
ちっとも売れないとは夢にも思わなかった。